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「グルルル…」
広い草原に、五匹の狼。
中央には、横たわっているひとりの少年。
髪は茶髪で、顔は美男子を絵で描いたように整っている。
心地良さそうな寝息と、この整った寝顔が、朝起きたとき真横にあれば、どんな女性であってもみとれるであろう。
しかし、そんな心地良さそうな寝顔とは一変し、彼は気づかない内に生死の硲にたっていた。
いや、寝ころんでいた、と言った方が正しいのか。
周りにいる狼は、徐々に距離を詰めていき、涎がかかる距離まで迫っていった。
ポタッ…
今まさにその美しい容姿を噛み砕こうとしたそのとき、不運にも狼が口を開けたことにより涎が滴り落ち、少年の顔についてしまった。
「う…ん…」
少年は顔についた涎を鬱陶しそうにふき取ると、いまだに重い瞼をゆっくりと開けた。
「…なんだこれ。イジメか?」
目を覚ました少年は、状況に似合わないような緊張感のない声で呟き、ひとつ深いため息をついた。
五匹の狼は、すでに切り刻まれ肉の塊となって横たわっている。
「最悪の目覚ましだな」
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