出会い

5/21
前へ
/157ページ
次へ
スタスタと歩き出した男を、ロクサスはいまだに警戒を解かずに暫く見つめていた。 「記憶、思い出したくないのか?」 ついてきていないことに気づいたのか、男は歩きながらロクサスに話しかける。 ロクサスは、暫く考えたが自分ではなにもできないと思い、素直に歩き出した。 「あんた…名前は?」 「なに、あとで勝手に思い出すさ。 なんせ、俺とお前は「親友」なんだからな」 「俺とお前が?」 「そ。 これでも、お前のことは誰よりも信用してんだぜ?」 「…悪い」 「なにが?」 「その…名前、忘れちまって」 その言葉を聞いた男は歩みを止め、ゆっくりとロクサスの方に向き合った。 「気にすんな。 大丈夫、すぐに全部思い出すから」 男が優しく微笑んだのが、話し方から読み取れた。 「有難う」 ロクサスも、自然と微笑んでいる。 男はロクサスの肩に手を置き、2・3回軽く叩くと、また何事もなかったかのように歩き出した。 その時…
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1074人が本棚に入れています
本棚に追加