1074人が本棚に入れています
本棚に追加
スタスタと歩き出した男を、ロクサスはいまだに警戒を解かずに暫く見つめていた。
「記憶、思い出したくないのか?」
ついてきていないことに気づいたのか、男は歩きながらロクサスに話しかける。
ロクサスは、暫く考えたが自分ではなにもできないと思い、素直に歩き出した。
「あんた…名前は?」
「なに、あとで勝手に思い出すさ。
なんせ、俺とお前は「親友」なんだからな」
「俺とお前が?」
「そ。
これでも、お前のことは誰よりも信用してんだぜ?」
「…悪い」
「なにが?」
「その…名前、忘れちまって」
その言葉を聞いた男は歩みを止め、ゆっくりとロクサスの方に向き合った。
「気にすんな。
大丈夫、すぐに全部思い出すから」
男が優しく微笑んだのが、話し方から読み取れた。
「有難う」
ロクサスも、自然と微笑んでいる。
男はロクサスの肩に手を置き、2・3回軽く叩くと、また何事もなかったかのように歩き出した。
その時…
最初のコメントを投稿しよう!