出会い

6/21
前へ
/157ページ
次へ
不意に男が立ち止まり、右手を右耳に添えて独り言のようにしゃべり始めた。 「…なに?計画変更? … なっ!? ちょっと待てよ! ロクサスはどうすんだ!?」 「…?」 ロクサスは、男が誰と話しているのかは解らなかったが、自分にとって厄介な話になっているのは理解したようだ。 「そんな…! なっ…はぁ…わかった、わかったよ…あぁ。」 いまだに誰かと話しながら、男がロクサスの方を見る。 目には、悲しみが含まれていた。 「ったく…。 記憶を取り戻したロクサスがキレてもしらねぇなからな」 そこで会話は終了したらしく、男はゆっくりと右手を耳から離し、申し訳なさそうにポリポリと頬を掻いて、視線を泳がせた。 「あ、あのなロクサス…言いにくいんだが…」 「なんだよ?」 すると、男がいきなり勢いよく顔の前で両手を合わし、頭を下げた。 「悪ぃ! その…お前の記憶を取り戻すって話…できなくなった…」 「なっ!? 待てよ、どういうことだよ!」 「ほんっきで悪ぃ! けど俺も「上」からの命令なんだ! だ、だから恨むなら俺じゃなく「上の奴ら」を恨めよ!? 間違っても、記憶が戻ったとき俺に当たるなよ!?」
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1074人が本棚に入れています
本棚に追加