シングルベル

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 「麻美さん…じゃなくて、ママ」  最近、娘は私のことを名前で呼びたがる。  名前で呼ばれるのは抵抗ないのだが、躾のない子だと思われたら娘が可哀相だ。  特に、シングルマザーであれば気負いもある。  しかし、生来の気分屋がわざわいして、対応はまちまちだ。  何度、上機嫌で「はーい」と返事をしてしまったことか。  娘も心得たもので、私の機嫌しだいで、すぐに言い直す。  今朝もそうだった。  「ママ、今年のクリスマスはママと過ごすからね」  「あら、優斗くんは?」  「優斗は遠征試合でクリスマスいないんだって」  「あら、残念ね」  高校生の娘の恋人は、爽やかなスポーツマンで、私もお気に入りだ。  スポーツマンと言っても、いかにも現代っ子って感じで、私たちの時代とだいぶイメージが違う。  「いいわ、久しぶりにケーキでも焼くわ」  「わーい、ママのケーキだーい好き!」  この頃、大人びてきたと思ってたが、こんなところは昔のままだ。 思わず頬がゆるむ  「ふふっ、行ってきまーす」  「行ってらっしゃい」  あれ?  もしかしたら、私を喜ばせようと大げさに喜んで見せた?!  まさかね…
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