短編 ふたつめ

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「なんて言うか、やっぱり他人なんていうのはどうしてもわかり合えないものじゃないかな。 だから必ずどこかに気にくわない部分があると思うんだ。日々の生活の中で自然と出てくる仕草とか、習慣とか。 育った環境の違いがあるから、どうしてもそういった自分と違う部分が目につく。 それは棘みたいだと、僕は思うんだよ。 でも恋しちゃうとそういう棘を見過ごしがちって言うか、自分に刺さってるって自覚が無くなる。 それで結局、その麻酔が切れてきた頃にようやく、自分に刺さってる棘の痛み気がつくんだよ。それに気づいちゃったら、離れて棘を抜くしかない」 「つまりは、恋なんて気の迷いだって事ね。 わざわざ分かりづらい言い方しないでも、そういうのは昔から恋は盲目って言葉で語られてるのよ」 このロマンチスト、と友人は吐き捨てて、また缶コーヒーをすする。 ロマンチスト。 そうなのだろうか。 僕としては、恋愛をさも美しいもののように語る世間一般の方がよっぽどロマンチストだと思う。 恋愛とはそんなに素晴らしいものなのか。
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