39人が本棚に入れています
本棚に追加
だから何言われても我慢した。我慢して私は大人だから笑顔で笑ったり怒ったり…
決して泣かなかった。人前では必ず…
必ず泣くなら自分の家で…
一人で泣く…泣いたの。
でも…もう我慢出来なかった。心が悲鳴をあげて…耐えきれず…授業中だというのに教室を飛び出して向かった先は屋上。
ここなら誰も来ない。授業中でも休み時間でも…
ガタンッ!
鈍い金属音と共にドアをあけ、私は柵にすがりつくようにその場にうずくまり泣き崩れた。
「う…っ…ひっく…」
涙が止まらない。
ずっと昔からの夢は教師になる事だった。
その為なら毎日頑張って辛い勉強もしたのだ。
そうして念願の教職につけたのに……現実は辛く…楽しいものはない。
生徒の笑顔をみるのが一番の幸せと思える教師になりたかった。
でも今は生徒皆の顔を見るだけで嫌な気分になる。
憎たらしい…私の気持ちなんか知らない親に甘えた子供がって…
「うっ…うあぁっ…ひっく」
鼻を鳴らす。涙は更に溢れる。
教師なんてなるんじゃなかった。
逃げたい…でも逃げたくない…逃げたら負けだから…
今までの苦労が水の泡…
でも…
「つら…い……辛いよ……っく」
「でも…それを乗り越えたら…楽しい事が待っていると思いますよ」
「っ!」
慌てて振り向く。
そこには一人の男子生徒が立っていた。
細く白い肌をした少年…
「こんにちは、先生」
「だ…れよ貴方。今は授業中よ…何でここにいるの」
声を震わせながら目をこすり、涙を落とす。それを見て少年はくすりと笑った。
「先生だって授業中なのになんでこんな所に?」
「そ…れは」
言葉を詰まらせる。
「俺…知ってますよ。先生…泣いてたんですよね」
「っ…」
「辛くて辛くて…我慢していたのが爆発して…ここへ来てしまったんですよね」
そういうと彼は私の横にきて座る。
絶対に生徒には涙を見せないと誓ったのに、それは呆気なく見られてしまった。
私は恥ずかしさに俯く。
最初のコメントを投稿しよう!