屋上で出会った少年…

3/6
前へ
/41ページ
次へ
だから何言われても我慢した。我慢して私は大人だから笑顔で笑ったり怒ったり… 決して泣かなかった。人前では必ず… 必ず泣くなら自分の家で… 一人で泣く…泣いたの。 でも…もう我慢出来なかった。心が悲鳴をあげて…耐えきれず…授業中だというのに教室を飛び出して向かった先は屋上。 ここなら誰も来ない。授業中でも休み時間でも… ガタンッ! 鈍い金属音と共にドアをあけ、私は柵にすがりつくようにその場にうずくまり泣き崩れた。 「う…っ…ひっく…」 涙が止まらない。 ずっと昔からの夢は教師になる事だった。 その為なら毎日頑張って辛い勉強もしたのだ。 そうして念願の教職につけたのに……現実は辛く…楽しいものはない。 生徒の笑顔をみるのが一番の幸せと思える教師になりたかった。 でも今は生徒皆の顔を見るだけで嫌な気分になる。 憎たらしい…私の気持ちなんか知らない親に甘えた子供がって… 「うっ…うあぁっ…ひっく」 鼻を鳴らす。涙は更に溢れる。 教師なんてなるんじゃなかった。 逃げたい…でも逃げたくない…逃げたら負けだから… 今までの苦労が水の泡… でも… 「つら…い……辛いよ……っく」 「でも…それを乗り越えたら…楽しい事が待っていると思いますよ」 「っ!」 慌てて振り向く。 そこには一人の男子生徒が立っていた。 細く白い肌をした少年… 「こんにちは、先生」 「だ…れよ貴方。今は授業中よ…何でここにいるの」 声を震わせながら目をこすり、涙を落とす。それを見て少年はくすりと笑った。 「先生だって授業中なのになんでこんな所に?」 「そ…れは」 言葉を詰まらせる。 「俺…知ってますよ。先生…泣いてたんですよね」 「っ…」 「辛くて辛くて…我慢していたのが爆発して…ここへ来てしまったんですよね」 そういうと彼は私の横にきて座る。 絶対に生徒には涙を見せないと誓ったのに、それは呆気なく見られてしまった。 私は恥ずかしさに俯く。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加