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「先生…俺と友達になってくれませんか?」
「え…」
驚いた。まさか生徒が教師に友達になんて言うとは思わなかったからだ。
内心嬉しかった。でもやはり私は先生で相手は生徒。
だからここは心を鬼にしなくては。先生が生徒と友達になったら特別視してしまうもの。
「駄目よ。嬉しいけどそれは駄目」
「なんで?恋人じゃないのに」
「こ……それは更に駄目よ!とにかく友達は駄目!友達なら高校生同士にしなさい」
「そうですよね……言ってみただけですよ先生…」
短く笑うと彼は悲しそうに目を閉じた。
胸がずきりと痛むが仕方がない事。
教師と生徒というのは教える側と教えられる側。適度な距離を保ちつつ接していかなくてはならない。
その線を越えてしまったら危険なのだ。
「先生は真面目ですね」
「先生が不真面目でどうするの?」
「そうですね…ふふ、でも今時真面目な先生ってそうはいませんよ。そういう嘘の仮面をつけた最低な教師ばかりですから今の時代。…生徒も生徒ですし」
「……」
「親も親ですしね…」
「っ…」
「先生は正しいのに…生徒の親から毎日受ける電話は精神的にまいりますよね」
「なんでそれを…」
「くま」
ぴとっと目の下を指で軽くつつく。
「化粧で隠していたようですが今は落ちてて見えますよ。くま」
「っ!」
杉本君の言葉にはっ、として顔をまたそらした。杉本君はくすくす笑う。
「担任を持つと必ず言われようがない親からのクレームがきます。昔は教師が生徒に手をあげるのは教育で愛の鞭というものでした。しかし今はなんでもかんでもすぐにクレームを叩きつけ、愛の鞭がただの暴力と言われる時代……今の親は子供に甘く子供を叱れない駄目な大人ばかりです…子供も子供、親も親で低能過ぎます…それは教師にもあらわれています。貴方も思うでしょ?昔の教師が良い…輝いていたと。なれるならそんな教師になりたい。だから貴方は教師になった」
「杉本君は観察眼があるのね。そうよ…私は今の腐りきったものを昔のように戻せたらって思ってた、生徒の目や親の目、校長や学校の風評を気にせず私は私の教師道を貫いていくと」
でも…そう簡単にいえてそれはとても難しい…
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