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「うざいって更に生徒に嫌われてしまうわね……」
「先生…」
「あっ…ごめんなさい。また…」
止まった涙がまた溢れ出す。
「生徒に弱いとこみせちゃ駄目なのに…」
「俺になら見せていいですよ」
「そんなわけにはいかないわ」
「いいんです。俺…先生の役にたちたい。俺にも人の役にたてる所があるんだというのを知りたいんです」
「杉本君…」
「俺は常に一人だから殆ど退屈なんです。だから先生…愚痴でも何でも俺にぶつけて下さい。対した事はできませんが…少しでも貴方の役にたちたいんです。俺は保健室と屋上によくいますから」
「……」
不思議な子。
初めて会って間もないのに私の役にたちたいなんて。
同情?憐れみ?でもそういうのとは違う。彼が私を見る目はそんな安いものには見えなかった。
キーンコーンカーンコーン…
その時チャイムが鳴り響く。
「あ…授業が終わりましたね」
「あ…」
「先生…大丈夫ですか?」
「え…えぇ、大丈夫よ」
本当は大丈夫じゃない。勝手に逃げ出してまたあの教室に入る事に抵抗がある。
でも杉本君に甘えるわけにも心配させるわけにもいかない。
だから私は笑顔でいった。
「大丈夫よ…だから杉本君も早く保健室で沢山勉強しなさい」
「…ふふ、先生は強いな…真面目で………好きですよ…そういう先生」
「有難う」
素直に礼が不思議と言えた。
「先生…俺には何の力もないですが…貴方を包み込む事は出来る…それだけは覚えていて下さい」
「杉本君…」
そういうと杉本君はその場を後にした。
まるで風のように突然現れて、突然消える。
それが不思議な少年との出会いだった…
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