屋上で出会った少年…

6/6
前へ
/41ページ
次へ
「うざいって更に生徒に嫌われてしまうわね……」 「先生…」 「あっ…ごめんなさい。また…」 止まった涙がまた溢れ出す。 「生徒に弱いとこみせちゃ駄目なのに…」 「俺になら見せていいですよ」 「そんなわけにはいかないわ」 「いいんです。俺…先生の役にたちたい。俺にも人の役にたてる所があるんだというのを知りたいんです」 「杉本君…」 「俺は常に一人だから殆ど退屈なんです。だから先生…愚痴でも何でも俺にぶつけて下さい。対した事はできませんが…少しでも貴方の役にたちたいんです。俺は保健室と屋上によくいますから」 「……」 不思議な子。 初めて会って間もないのに私の役にたちたいなんて。 同情?憐れみ?でもそういうのとは違う。彼が私を見る目はそんな安いものには見えなかった。 キーンコーンカーンコーン… その時チャイムが鳴り響く。 「あ…授業が終わりましたね」 「あ…」 「先生…大丈夫ですか?」 「え…えぇ、大丈夫よ」 本当は大丈夫じゃない。勝手に逃げ出してまたあの教室に入る事に抵抗がある。 でも杉本君に甘えるわけにも心配させるわけにもいかない。 だから私は笑顔でいった。 「大丈夫よ…だから杉本君も早く保健室で沢山勉強しなさい」 「…ふふ、先生は強いな…真面目で………好きですよ…そういう先生」 「有難う」 素直に礼が不思議と言えた。 「先生…俺には何の力もないですが…貴方を包み込む事は出来る…それだけは覚えていて下さい」 「杉本君…」 そういうと杉本君はその場を後にした。 まるで風のように突然現れて、突然消える。 それが不思議な少年との出会いだった… .
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加