The Last Bet,For you

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* * * 私は、塾に通っている。 塾自体はCMでよく聞くような、大手の分校。 だけど他の教室と違って、うちのは個別に近い。 講座人数は通常二十人くらいはいるものらしいんだけど、ここでは一講座十人以下が基本になっている。 稀に人気のある講座はそれ以上になったりするらしいけど、基本的にどの先生も教え方が上手いし面白いし、そこまで人気が偏ることは無い。 そしてそんな中でも一番の若手が、北見先生こと北見冬斗(きたみとうと)。 非常勤講師の彼は、未だ二十五だと言う。 ‥‥ついでに、先生はとても綺麗な顔立ちをしている。 本人は染めてないと言う猫っ毛で、ふわふわの綺麗な茶髪。 それが冷たくも見える彫刻のように美しい横顔を、予想以上に可愛く仕上げる。 スッと通った鼻筋、切れ長で吊り上がり気味の眼、薄い唇。 ひょろりと高い身長も、とても人目を引く。 中身は面倒くさがりやで、無精で、親父臭くて、ただのニコチン中毒なのに。 その美麗な横顔は、誰の眼も引きつけるから。――――私の眼も。 先生と出会ったのは、今年の四月。 大学受験を目前にして、私は毎日をぼんやりと過ごしていた。 その煮え切らない態度に困った母は、近所でも評判のいいこの塾に入ることを勧めた。 私自身、そろそろ勉強もしなくちゃな、そう思っていた頃だから素直にそれを受け入れた。 とりあえず連絡を取って説明を聞きに行き、塾長もいい人だったから、その場で話はまとまった。
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