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先生の授業は七時から八時で、最終授業の二つ前。
私はその後一時間開けて、九時二十分から最終授業の数学が詰まっていた。
終わった後、わざとゆっくり先生の教室に向かって。
私が着いた時、横田さんはもう帰っていて、河村くんが必死にプリントを解いていた。
ドアが開いた音に反応して、教壇の椅子に座っていた先生は少しだけ視線を上げて。
私だと気付くと、手を軽く振ってから持っていた書類に何か書き込んでいた。
私も小さく頭を下げて、教室を見渡す。
河村くんは窓際、後ろの方に座っている。
あんまり仲が良い人でも無いし、騒がしいタイプの彼は、少し苦手だったから。
プリントを北見先生から受け取った後は、廊下際の一番前の席に着いた。
五分か、それ位経って。
教室の中がどこまでもシンとした空気に包まれたころ。
後ろの方から「終わったー!!」という叫び声が聞こえた。
ビックリして、思わずシャーペンを握り締めた瞬間。
「‥‥うるせぇよ馬鹿が」
重なるように返される先生の声は、ひどく自然に、私の耳に馴染んで。
‥‥トクリ、また心臓が鳴る。
きちんと浮かんでいたはずの、問題の答えは、不意に消えてしまった。
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