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さて、次は…と翁潤が話し始めたが、篶歌の耳には届いていなかった。
変わりに先程出た名前が、頭の中で繰り返す。
『朧宇利(オボロ ウリ)』
話が終わり、解散となると、篶歌は名前の主の所へ向かった。
すると、廊下を横切る人込みの中に、一味変わった剣を見つけた。
「あれだ!」
間違いない。いや、間違えるはずもない。
篶歌は斗玻とは違う変わった剣の鞘を掴む。
「うぉっ」
すぐに間抜けな声が聞こえた。
長い黒髪を頭の上部で結んだ髪型。服装こそは斗玻の兵士のものだが、明らかに一味違う風貌だ。
「朧(オボロ)!」
そう。彼こそが変わり者で知られる朧宇利(オボロ ウリ)だ。
朧は振り返り、鞘を掴んだ篶歌の姿を見ると、大きなため息をついた。
「篶歌様。驚かせないで下さいよ」
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