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鮮やかに彩られて並ぶ豪華な料理たち。
食欲をそそる香りが漂い、篶歌(エンカ)は自制心を断たれそうになり、思わず料理に手を伸ばす。
─しまった……。
にやりと口元を上げて笑う顔が脳裏に浮かぶ。
見なくても分かる。目の前に腰かける父上は絶対笑っている。
「お前もそろそろ限界か?」
「……卑怯だ。食べ物で釣るだなんて」
篶歌は、ぷいっと顔を反らすと、料理に伸ばしかけた手を引っ込めた。
くすくすと軽やかに笑う父親の声が聞こえる。
優しそうに見えるが、意外と鬼畜なんだ、この男(ヒト)は。
「篶歌(エンカ)、私は無理に、とは言ってないんだよ?ただ国政を考えると“お願い”をせざるをえないんだよ」
「それは“お願い”とは言えない」
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