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諦めたトトはエレナの服に付いている、トト専用のポケットに入って行った。
トトがポケットに入った事を確認してから改めて周りを見ていく。
風が辺りを吹き抜け、ところどころ木や草が大きく揺れているが、これは明らかに風だけのせいじゃない。
そう自分の考えをまとめて行動しようとした時に、何か生物の大きな声が聞こえた。
「これは…アラディアの咆哮…!?」
すぐさま草木を掻き分け、声が聞こえた所に向かう。
草木を掻き分けた先に居た声の主は、猛禽類のように尖った爪に、何もかも噛み砕いてしまいそうな鋭い牙。
そして鋭い目付き。
体長は約二メートル弱と身体は大きく、毛深い体毛に覆われているそれは、熊に似た生物。
それがアラディア。
そのアラディアは、咆哮をあげながら誰かを襲っていた。
よく見ると、ここでは見たことの無い服装に身を包み、多少動きずらそうに戦っている黒髪の少年が居た。
いや、戦っているわけではない。
明らかに一方的にアラディアに傷つけられている。
その少年は肩に傷をおっているらしく、痛みに耐えながら肩を押さえている。
このままでは、あの少年が殺されてしまう。
そう思ったエレナは右手を前に出し、目を瞑り言葉を紡ぐ。
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