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「癒しの力を我に……」
瞬間、手を包み込むように光が収縮していく。
その光っている手をその少年の肩の傷口に当てる。
「……っ」
一瞬顔が強ばるが、傷口が治っていくうちに顔が揺るんでいくのが分かる。
「ふぅ……。もう大丈夫か……きゃあ!?」
一息付き、少年から離れようとしたその瞬間、少年の体がグラグラとバランスを失いエレナの方に倒れていく。
気が揺るんでいたので、エレナは支える事が出来ず倒れてしまった。
(うぅ~どうしよう…)
何しろこんな事初めてなので、どういった対応をとればいいのか対処に困ってしまう。
ましてや見た目は自分の年に違い男の子。
嫌がおうでも反応して、恥ずかしくなってしまう。
多分今の自分の顔は耳の裏、首筋まで紅潮している事だろう。
そのまま押し倒された状態の体制で居ること約十分。
不思議と嫌ではなかったが、そんな時間が終わりを迎えてしまう。
自分に覆い被さっている少年は微睡みながら目を開けた。
「……?」
「……?」
エレナとその少年は目が合ったまま見つめ会う。
少年は状況を整理しているのだろう、ボォーとエレナの目を見つめていた。
「あの……大丈夫?」
痺れを切らしたエレナは少年より先に言葉を発した。
その言葉で我に戻ったのか、急いで少年はエレナの上から飛び退いた。
「わぁぁぁぁあ!!ごめんなさいごめんなさい!!本当にごめんなさい」
必死に謝る少年。
エレナはあまり気にしてないので、立ち上がり自分の服に付いている砂ぼこりを落とす為に服を自分で叩く。
少年は未だに謝り過ぎというぐらい謝っていたがそんな事を無視し、エレナは微笑みながら、
「私はエレナ。エレナ=ローバル!貴方の名前は?」
少年に自分の右手を差し出す。
少年もその右手を掴み、そして微笑みに吊られて、
そして笑顔で、
「僕の名前は―――」
――こうして、運命の輪は廻り始める。
そして世界は終焉を辿っていく。
少年は運命という舞台で道化を演じることになる。
少年を滑稽と笑うも良し。
悲愴と同情するも良し。
はてさて、少年は終焉を防ぐ事が出来るのか……?
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