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外の雨はすっかり上がり黒い雲もどこかに消え去っていた。玄関先で園子と朋美に見送られて2人は車に乗り込む。
「……先生、浦賀琴音さんはどうしますか」
「今日は遅いからまた出直そう」
「分かりました」
シートベルトを締め、尚也がエンジンを掛けると車内の計器はグリーンに彩られ、ヘッドライトが濡れた路面を映し出す。そして、低く重いエンジン音が静寂を破って後、4つのタイヤがゆっくりと回転を始める。
「……今日は朝からだったから疲れただろう」
「いえ、大丈夫です。それより朋美さんは絶対犯人じゃないですよね」
「どうして?」
「だって、あんな清純そうな子が人を殺すはずありませんよ」
「惚れたか」
「ち、違いますよ、からかわないで下さい」
「ははははっ、悪い悪い。でも、美人だったな」
「まあ、美人でしたけど」
背後の冬木家は闇と、そして、他の家と同化し、どの家かはもう分からなくなった。
「なあ、尚也君……」
「何ですか」
「普通、犯人が密室にする理由って何だと思う?」
「どうしたんですか、急に?」
「うん、ちょっとな」
「そうですねぇ、普通は捕まらない為だと思います」
「だよな。密室は犯人にとって完璧なアリバイと一緒、そこに存在しないと同じだからね」
「ですよね」
「でもなあ、今回はそれとは違う気がするんだよ」
「えっ、本当ですか!?」
「いや、ただ何となくそんな気が……」
卓司はそう言い掛けて腕組みをして黙る。闇にヘッドライトが克明な軌跡を残し、エンジンの軽快な音が耳に届くだけであった。
「あっ、そうだ。先生、立石さんの服装について尋ねてましたが、あれは何か意味があるのですか」
「うん!? あれか、あれはね、立石が外出するのか、あるいは来客があるのか、そして……まあ、もう1つは可能性が低いんだけど……その辺の事を確かめる為……」
卓司の答えは少し抽象的で尚也にはよく理解できなかった。
「それにしても腹減ったなあ。どうだ、高速に乗る前にその辺でラーメンでも食べるか」
「あっ、大賛成です」
狭い道路を右折し暫らく直進すれば、やがて無数のヘッドライトが行き交う一般道に到る。
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