2.彼女というもの

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夕方になって、エリから電話がかかってきた。学校が終わったのだ。 僕はいつものように「学校はどうだった?」と尋ね、続けて「朝はメールできなくてごめんね。」と謝った。当然「いいよ、いいよ!」と元気な反応が返ってくると思っていたのに、そうではなく、彼女は遠慮がちに言った。 「あれからどこかに行ってたの?」 ん? 「あれからって?」 「昨日別れてから。夜、電話くれなかったし、朝も。」 夜の電話…。頭になかった。昨夜は彼女の部屋に長くいて、家に着いたのは午前0時を越えていたから、かけなくて当たり前にしていた。 「いや、どこにも行ってないよ。」 「本当に?」 「本当だよ。大体あんな時間からどこに行くんだ?」 「う…ん、風俗とか。」 風俗? 「どこかに行ってたから連絡をくれないのかなって思ったの。」 すごい想像力だ。 「昨日は家でずっと練習してて、その後は寝てしまったんだ。だから君からの連絡にも気づかなかったんだよ。」 とにかく事実を述べる。 すると彼女は少しの間を置いて、「なんちゃって!」と、急に明るく言った。そして、「それならいいの。じゃあこれからいつもの場所で待ち合わせね!」と言うと、僕の返事もそこそこに電話を切ってしまった。 う~ん。 携帯を閉じながら何だかスッキリしない。彼女が納得したようには思えないからだ。他に言いたいことがあるようにも思う。 会えばわかるかな。 それにしても、連絡を忘れただけで、女の子って色んな事を考えるんだな。 僕は財布をジーンズに突っ込むと、彼女より一分でも早く待ち合わせ場所に着けるよう、急いで家を出た。
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