プロローグ

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 またこの季節が来てしまった。  暖かい日差しにそよ風が綺麗な桜の花びらを優しく揺らす。そのたびにピンク色の花びらが舞い落ちて、地面を染めていく。  あれから気づけば、もう五回目の春を迎えてしまった。春は大好きな季節だったのに、今は少し嫌いだよ。  並ぶ桜並木をゆっくりと歩きながら、奈緒はなびく髪の毛を耳にかけた。  ねぇ恭介、二十三歳になっちゃったよ。時間の流れって、すごく早いんだね。  二人の時間はあれから止まったまま。いつになったら動き出すんだろうね? 周りはどんどん変わっていくのに、自分だけずっと変わらないあの頃のままだよ。  貴方がずっと想ってくれたから、ずっとずっと想ってる。五年でも十年でも、ずっと待ってるよ。
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