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突然、雷が一つの幹を形造るようにいくつも、悠一の正面五メートルほどの一点に降り注いだ。 「?」 悠一以外の全員が、失敗かと思った。誰もが雷の落ちた先を見つめていた。 すると、そこから根のように、蜘蛛の巣のように、地を這う電撃が放出された。それらが向かう先には―― 顔色を変えずに詠唱を続ける青年の姿があった。足元の魔法陣は強い光を放ち、そこから感じ力は周りの空気を震わせるほどに。 「問題は、ここだ」 悠一が言ったそのとき、大きな爆発音と強い光が会場を包んだ。 地を這う電撃は青年が放っていた円形の結界と衝突していた。悠一の電撃がそのラインに入った瞬間、さっき小石を粉々にしたように上から雷撃が降り注ぎ、侵入を阻止しようとする。 雷と雷がぶつかり合い、激しい音と光を放つ。そこがどうなっているかなど、見ることができない。 「りゃあぁぁぁああ」 悠一が顔をしかめながら叫んだ。するとそのとき、地面に描かれた円形の結界の全体がまばゆい光を放ち、そのラインに沿って、一斉に雷が落ちた。その光景は、雷の檻とも、また滝とも言えるものであった。 そして、それらが消えたその後には、もう雷撃を放つラインは消えていた。 「!?」 それを見た青年はさすがに驚き、詠唱を止めた。足元の魔法陣が、光の粒を伴い放射状に放出される風とともに消えた。 「くっ」 既に悠一の地を這う電撃が目前に迫っているのを見、顔を歪めた青年は、しかし冷静に判断。一瞬緑の光が現れたかと思えば、青年の正面の地面からみるみるうちに植物が伸び、電撃との間に壁をつくった。 電撃がその壁を焼き消す。が、その向こうに、青年の影はなく、既に悠一の攻撃の及んでいないところに位置を変えていた。向きを変え迫ってくる電撃をひらりとかわす。 「ダメか……」 悠一はため息混じりに言った。あんなに簡単にかわされるようでは、いつまでたっても当たりはしない。 「これでどうだ。ヴォルトドラゴン!」 悠一は詠唱などせずに叫んだ。すると、未だ青年を追う電撃の、その発生源のあるところから、竜を形作る雷が、放出された。 それはまっすぐ青年を狙い、青年は驚愕の顔に汗を滲ませながら、かろうじてこれをかわした。 しかし、その竜は地に落ち消えるようなことはなく、孤を描くように向きを変え、再び青年に襲い掛かる。 「くそっ、当たれぇ!」 避ける者と同じぐらい汗を滲ませ、悠一は言った。
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