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真は正座のような体勢座っていた。真っ暗で、何も見えない。
「どこだよここ……ってか悠ぃ……うわっなんだこの床! ぐにゃぐにゃだ」
「……お前が乗ってんのか」
「あぁ、悠一か」
「あぁじゃねぇよ、どいてくれ」
「すまんすまん」
真は悠一の上から降りた。下から影が立ち上がる。闇に目が慣れてきてはいるものの、輪郭が確認できる程度だ。
「ったく……で、ここはどこだ? さっきの館じゃないよな」
「さぁな」
真は生返事をし、改めてまわりを見渡した。今まで気が付かなかったが、闇の中に一筋、光が真っすぐ縦に走っている。
「あれ、扉か?」
真と同じものを見たのか、悠一が声をあげた。
「そうかも」
真は目を細めてそれを見るが、その向こうに何があるかはわからない。しかし、そこから叫び声とも、歓声ともつかぬ声が、細かな振動のように漏れてきていた。
「なんだろ。これ」
「戦国の合戦はこんな感じの叫び声が上がってるイメージがあるな」
悠一の物騒な例えに、真は顔をしかめた。すると、
「おい真、なんて顔してやがる」
「えっ?」
真は輪郭だけの悠一を見た。見えてるのか?相変わらずすごいやつだ。などと思っていると、悠一が
「行ってみるか」
ある程度予想はできたが。
「本気か?」
真は答えつつ、しかしそれしかこの状況から逃れる手段はないと思った。
「それしかないだろ」
悠一も真と同じ考えのようだ。
「戦国だったらどうすんだよ?」
真は冗談半分に言った。
「ちらっと見て、お邪魔しました、だろ」
「適当だな」
悠一の変わらぬ反応を聞きながら、真は立ち上がった。横で悠一も立ち上がる。
扉の前に立ち、真は言った。
「俺、今すごいワクワクしてるわ」
悠一はニッと笑い、
「そりゃ、よかったな」
二人は扉を押し開けた。
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