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突然の光が、闇に慣れた二人の目に刺さる。同時に耳にも大きな声が。扉越しに聞こえていたその声は、歓声だった。 「「…………」」 二人は言葉を失う。 そこは野球場のような場所だった。草野球ができる程度の広さの地面、その周り、フェンスの上にはすり鉢状に観客席が並び、観客がその全てを埋めている。フェンスも、壁も、全てが黄土色で、まさにコロッセオと呼べる建物だった。 そして、その真ん中には、長い銀髪を揺らし、蒼いマントを翻らせながらすらりと立つ、一人の青年がいた。腰にかかるそれは、抜けばそこから鈍く銀色に光る、長く鋭い刃が姿を表すことは想像に難くない。 二人はその光景を言葉なく見ていたが、 バタン、と二人が今しがた入ってきた扉が閉まり、大きな音を立てた。 銀髪の青年がゆっくりとこちらを振り返り、それに気付いてか、会場の歓声が徐々に小さくなっていく。 青年の蒼い瞳が、二人をとらえていた。二人もそれを睨み返す。やがて青年が口を開いて―― 突然、二人が淡い光に包まれた。その光は一瞬で消え、しかし何も変化はない。 「「?」」 キョトンとする二人を見ながら、サッと腰のそれに手をかけ身構えた青年は、改めて口を開いた。 「お前ら、何者だ?」 「いや、誰と言われても」 悠一はいつもどおり冗談めかした返事をした。真は黙ったまま青年を見つめる。 「ふん、なるほどな」 青年はそれだけ言い、剣を抜いた。途端、青年の足元から光の円が波紋のように広がり、半径1メートルくらいまで広がるとそれは消え、刹那、二人の目の前に一閃、雷撃が走った。 二人は目をまるくして地面を見た。雷の落ちた一点は浅くえぐれ、そこから煙が立っている。 「えっ? ちょっ……」 真はそこで初めて声を発した。そこには驚愕の色が隠すことなくふくまれていた。 「おいおい……」 いつも通りのセリフを発する悠一のその声も、顔も、少なからず驚きに引きつっている。 「次は、当てるぞ」 青年は二人に剣の先を向けた。その距離約30メートル。 「やばいな」 悠一は言った。さっきの一撃、わざと外したことは明白だ。 「ちょっ、待て待て。訳わかんねーって!」 「ふん」 慌てる真をよそに、先程同様、光の円が一瞬輝き、 「走れっっ!」 悠一が叫ぶ。 背後で稲光が煌めいた。
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