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「何だよこれ!」
「いいから走れ!」
背後には二人を追うように幾閃もの雷撃が走っていた。
「意味が分かんねぇって」
後ろを確認する余裕もなく真が叫んだ。いつ自分達に雷が落ちるか、わかったものではない。
悠一は一見冷静なようだが、その顔は引き攣り、冷や汗が垂れている。
と、当然悠一が走る方向を変えた。
「お、おい。悠一?」
「二手に別れるぞ」
「ちょっ、おい」
しかし既に悠一は進路を変えてしまっているおり、今更どうしようもない。真はそのまま走った。
が、ふと背後の雷撃の音が止んだ。罠である可能性も考えたが、真は思い切って振り返った。
攻撃は、なかった。
しかし、青年のほうをみると目を閉じて何か呟いている。足元にはさっきよりも激しく光を放つ円があり、青年の長い銀髪はその光に煽られるかのようになびいていた。
真はちらと悠一を見た。少し離れたところで、青年を食い入るように見つめている。
カッと青年が目を開けた。
幾重もの雷撃が絡まり合うように真に襲い掛かる。さっきまでのものよりはスピードは遅い。しかし、真は動けない。足が言うことを聞かない。ただただ眼前にせまりくるそれを眺め――
「っ危ねぇ!」
真は突然の横からきた衝撃に吹き飛ばされた。鼻先を雷撃が掠める。
真は地面に転がった。走り込んできた悠一に蹴り飛ばされたのだか、それに気付く間もなく、
「真ぉっ!」
真の目の前に二撃が迫っていた。真ははっと我にかえるが、もう遅い。
「うわぁあぁぁあぁ!」
爆発の如き激しい光が辺りを包んだ。その音が、空気を震わせる。
歓声が静まり返り、砂埃の上がるそこを見つめていた。
「今のは……」
沈黙を破ったのは青年だった。その目は驚きに見開かれ、まっすぐ砂埃を見つめていた。
「ヒヤヒヤさせんな。マジで焦ったぞ」
悠一はフッと息を吐きながら言った。
観客席からは、えっ?とかうそ、とか言う声が聞こえる。
誰もが見つめるその先には――
「えっ?」
雷撃を喰らう前の体勢のまま、目を点にしてへたりこむ真がいた。
「貴様……」
青年はその姿を見ながら吐き捨てた。
「おい、真、今、何した?」
真に走り寄りながら悠一が聞いた。
「分からん」
真は声を震わせたまま答えた。ただ冷や汗をかいた手を見つめている。
そんなに真とは対照的に、
「もっかい、できるか?」
悠一はニヤッと笑いながら、
「作戦がある。何とかなるかも」
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