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「お前なぁ。そんなの、もし俺が成功しても、お前はできんのか?」 悠一の策を聞いた真はそう聞かずにはいられなかった。 「多分。まぁ、それしかない気がする」 「マジかよ。まぁ、ないのか?」 真はさっきの衝撃で逆に落ち着き、冷静に話す。悠一も既に落ち着いており、 「逃げてばっかじゃ、結局捕まって、終わりだ」 「確かに。その作戦、乗ってみるか」 「よし」 二人は、青年に向き直った。剣を鞘におさめ、二人の方を見ている。 「終わったか」 青年は静かに言い、剣を抜いた。 「あぁ、ばっちりだ」 悠一は相変わらず不敵な笑みを浮かべている。 「ここからが、本番だ」 「承知の上だぜ」 「ふん」 青年の足元から、今度は赤い円が現れた。二人が後ろに避けると、今まで二人がいた場所から大きな火柱が上がった。熱波が二人の顔を撫でる。 「雷だけじゃないってか」 真は言い、火柱を睨んだ。 「予想の範囲内だろ」 悠一もそれに続き、燃え上がる火柱を見て、 「多分、なんかくるぞ」 と続けた。 途端、火柱の中から雷撃が一閃。悠一は真を一瞥し、 「ブラインドか。真っ!」 「よっしゃ」 真は両手を前に広げ、「はっ!」と一声。 すると、雷撃は真の両手の少し手前で弾かれるように消え、ついでと火も消し去った。 「「おぉっ!」」 二人は同時に声を上げる。ここまでは成功だ。 「ほう」 青年は言い、今度は何の陽動もなしに雷撃を繰り出した。 「真、少し頼む」 「了解」 真はそう言い、いくつのも雷撃を防ぐ。その後ろで悠一は目をつぶり、極度に集中しているようだ。そしてふと、 「よし」 と目を開けた。すると、青年と同じように、足元から円形に光が広がった。近くで見るとそれには細かい紋様が刻まれでいる。 そして、同時に、青年を一筋の雷撃が襲う。 青年はそれをひらりとかわした。悠一は何度も雷撃を放つが、当たらない。 「くそっ」 悠一はくやしげに顔をしかめた。真はひたすら雷撃を防いでいる。 このままでは決着が付かない。三人はそう思った。しかし、下手に均衡を崩しにかかるのも恐ろしい。 そんな中、動いたのはやはり青年だった。避けるのをやめ、剣を高々と掲げて、 「天より来たる超速の極光よ、我のもとに雷の伽藍を」 唄うように言葉を紡いだ。青年の足元には幾何学的な模様の浮かぶ魔法陣が光を放ち、彼の周りには、目に見えない何かが渦巻いているようにも見えた。
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