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竜と地を這う根。二つの攻撃を青年は上手く避け、悠一の攻撃は当たらない。そんな二人の攻防を、真は静かに見ていた。 (飲み込みが早いとかいうレベルじゃないだろ) そう思った。自分達は、ついさっきここに足を踏み入れたばかりだ。なのに悠一は、超常の攻撃を仕掛けてくる者と対等に戦っている。訳が分からない。 「おいおい……」 何だこれは。かく言う自分も相手の攻撃を防ぐなどということをしているのだが、真は戦う二人を見ながら困ったように頭を掻いた。 青年は悠一の攻撃を避け続けている。が、突然、青年はよけながらも悠一の方へ走りだした。 「剣か!」 悠一は悟る。うかつだった。魔法ばかりに気を取られ、剣を持っていることを忘れていた。悠一は身構え、青年と真っ向から対峙する形となった。 しかし、青年は今まさに斬り掛かろうとしたそのとき、急にハッと表情を変え、斬撃を止めた。 「くっ」 きょとんとする悠一をそのままに、青年は後ろからせまる電撃に一瞬目を向け、それをかわし、再び悠一から距離をとった。 悠一はその行動の意図をはかりきれず、思考を巡らせる。今のは確実に自分を倒せるであろう状況だった。ではなぜ?思考が頭の中でループする。 悠一は青年を見た。自分の攻撃をかわし続けてなお、体力は十二分に残っているようだ。持久戦は期待できない。実際、技を出している間、悠一は動かずとも疲労していた。これでは自分の攻撃が尽きるのも時間の問題だ。 と、そのとき突然、外で爆発音が響いた。誰もがその音のしたほうへ目を向ける。しかし、次の瞬間、爆発音とは反対側にあたる位置の観客席から目も眩むような光が放たれ、そこから観客の叫び声が聞こえた。 「しまっ――」 そう言ったのは青年だった。光で目が眩み、周りを見ることができない。自分の足元にまで伸びてきた電撃に足をとられ、目が戻ったときには既に―― 「あぁっ!」 悠一が気付いたときにはもう遅い。青年の眼前に迫った雷の竜は、そのままバチバチと音を立てながら青年に直撃。 「ぐぁっ、ちぃっ!」 慌てて悠一が攻撃を消し止めたが、青年はそのまま地面に倒れた。その直前、青年の手から観客席に向けて一筋の光が放たれた。 「何だ?」 真が悠一に走り寄りながら聞いた。悠一は首を横に振り、 「わからん」 「だよな」 とりあえず二人は、青年が示した何かが気にかかり、観客席へ向かうことにした。
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