15/17
332人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
観客席はパニックになっていた。誰もが我先にと出口を目指し、押し合いながら通路に流れを作っている。二人はそれに逆らうようになんとか進んでいたが、いよいよ進むのが困難になり、客席を数段上ってとりあえずそれから逃れた。 「おい、ここまで来たのはいいが、どうするんだ?」 大きく息をしながら真が悠一に尋ねる。これに悠一は少し険しい表情で、 「とりあえず、落ち着いてる人がいたらその人から情報を得る」 「その後は?」 「決めてねぇ。でも、さっきのやつの原因が近くにあんなら、それを探りにいく」 悠一の言葉に、真は思わず声を上げてしまう。 「待て待て正気かよ? 爆発してたぜ? さっきの雷とか見たろ? それに、原因探ってどうすんだよ」 一気にまくし立てる。真の言うことはもっともで、この非現実の中で極めて現実的であった。しかし、応える悠一の表情は、いつになく真剣。 「あぁ真。分かってるさ。でもな、落ち着いて聞いてくれ。俺が考えるに、それが最善なんだ」 首を傾げる真。悠一は尚も続け、 「いいか。とりあえず帰り方は分からない。そうなるとどこか滞在する場所が必要だ。生憎、どっかに泊まれるほどの金は持ってないしな。で、俺達がここに来たときの状況を考えろ。そしてさっきのあれだ。ここで誰かに泊めて下さいと言っても、どう考えてもあやしいだけだ。本来、この状況で活躍すべきであろう騎士さんを倒しちまったのは俺達なんだから」 「なんだ、俺達犯人扱いってことか?」 「そうも考えられるってこった。それにだ、もしどっか泊めてくれるとこがあったとしても、あんな訳わかんねぇもん見せられてんだ。多分、〝常識〟知らずの変人扱いされるぜ?」 矢継ぎ早に繰り出される悠一の言葉を頭の中で繰り返しつつ、よくもまぁここまで考えられるものだと感心しながら真は「で? まだあんだろ?」と先を促す。悠一はそれを受け、ふぅっと一つ、行きを吐き、 「あぁ。で、だ。原因を探ろうとすると、そこで俺達と同じような行動をとってるやつと出会うかもしれない。そいつがどんなやつであれ、パニックになって逃げてる奴らよりは話も通じる。それがなくても、事件を解決すりゃ、なんとか名は広まるだろ。そうすればどうにか行動もできるし」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!