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そしてやっとのこと二人は建物を出た。その後どうしようかなど、考えていない。
「おい、あれ」
悠一が指差す先には、道があり、そこに一筋の光の筋が伸びていた。
「さっきの剣士のあれか」
真は関心したように言う。青年は倒れる直前、観客席に向けて何かを放っていた。
「やるねぇ、彼」
悠一はククッと笑う。
「お前が倒したんだろ」
「たまたまな。っつーか、行くぞ」
二人は光にそって走りだした。
正方形のブロックを組み合わせた模様の道の周りには、隙間なく建物が立ち並び、どの建物にもシャッターが下りている。
「魔法あるのになんか普通だな」
真が呟いた。どこを見ても、普通の町並みだった。
「だな」
いくつも十字路を過ぎるが、光の線はただ真っすぐに伸びている。
「これ、あってんの?」
真も不安になってきた。すると悠一が、
「いや、大丈夫みたいだ」
見ると、少し遠くに人影が見えた。走っているように見える。そんなに速くはない。二人はスピードを上げる。
「あっ、曲がった」
真は指差して言うと、悠一も難しい顔をして、
「気付かれたか?」
さらにスピードを上げる。
「ってか悠一、魔法!」
「何言ってんだ真。ゲームのし過ぎか?」
「お前さっきドンパチやってたじゃねぇか」
「スマン、冗談だ。っつっても、できないのはマジだ」
「えっ? なんでだよ?」
悠一は肩をすくめ、
「分かりゃ苦労しねぇって。なんていうの、インスピレーションが湧かないっていうか」
「芸術家か!」
「かもな」
「…………」
そんな話をするうちに、いくつも十字路を曲がり、逃げる者との距離も縮まっていた。同時に、逃げているのが二人の男だということも分かった。片方が長い金髪の女性らしき人を肩に担いでいる。話を聞いたおじさんも、女の子だと言っていた。
「おいおい、レディになんてことを」
悠一が冗談混じりにいった。その距離はもう10メートルと少し。前方の二人の、手ぶらの方が振り返り、となりの男に何か囁いた。
すると、女性と二人の輪郭が、焦点をずらしたように二重にぶれ、それが広がり、そのまま二組になった。
「二分の一だな」
真が驚く間もなく悠一は呟き、案の定、前の二組は十字路で左右に散った。
「真はそっちだ!」
悠一は叫び、右の道に。真は言われた通りに左に曲がった。
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