追走

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思えば、かなりの距離を走っていた。立ち並ぶ建物の上にはそびえ立つ白い壁が見え、この町並みの終わりを告げていた。 しかし、今走っている道の向こうに門のようなものはなく、ただ壁があるように見える。 「?」 真は首をかしげた。そうか、こっちはハズレだったのかという考えに至ったが、それはすぐに否定される。突き当たりの壁に穴があいており、それは人がしゃがんでくぐるにはちょうどいい大きさだった。 二人はそれをくぐり、真も後を追う。壁の向こうには、林が広がっていた。数え切れないほどの木が地面から伸び、その葉が太陽の光を隠している。地面は枯れ葉におおわれ、所々に朽ち木が倒れている。 道なき道、とはまさにこのこと。真は足場の悪い中二人を追った。若干傾斜になっており、それを登る形で走っていた。ここへきて、なかなか差が縮まらない。 「どこに向かってんだ?」 目的が見えない。そうしているうちにどんどん傾斜が急になっていった。長く林を走ったはずだが、不思議と体力が残っていた。そして、ついに真は林を抜けた。 「うわぁー……」 思わず声がもれた。いつの間にか高くに登っていた。右をみると崖があり、その下には林が見え、その向こうには道が見えた。そのどれもが小さく見え、遠くには山も見えた。 左は対照的に断崖絶壁の岩の壁があり、見上げても頂上が見えない。 その間に挟まれた坂道は、緩やかな孤を描いており、始めは広かったのだが徐々に狭くなり、幅1メートルほどに。いつの間にか崖下には白い霧が立ち込めていた。 二人組は人を担いでいるからか走りが遅くなった。それを見た真は、少しスピードを上げる。もともと高いところは苦手ではないが、この高さには多少の怯えを感じずにはいられない。 いよいよ差が縮まってきた。が、このタイミングで道が少し開けた。二人組はここで再びスピードを上げようとする。 「くそっ、待てっ」 それを追う真は、担がれた少女が、目覚めようとしていることに気付いた。 (いいぞ、起きちまえ) ちょうどよく、今は道が少し広くなっている。(それでも狭いのだが)今目覚めて少し抵抗ぐらいしてくれれば、そこで捕まえられる、と真は考えた。 「待ちやがれぇ!!」 さほど距離はないが大声で叫んだ。待てと言われて待つやつはいない。目的は少女を起こすことだ。 「んっ……」 少女は気がついた。同時に、真は勝利を確信する。
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