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「そうなんですか?」
少女は驚いた顔をし、
「そうですか……ホントに、いろいろ迷惑おかけしてすみません」
と目線を下げた。それを見て真は、
「悪いのは君じゃないって。君を誘拐しようとしたひとが悪いんだよ」
慌てて言い、思い出したように
「そういえば、あの二人はどうなったのかな」
と付け加えた。すると少女は、
「えっと、あの二人は壁にぶつかって上でのびてます。助けようとしてくれていたあなただけこんなところに落としてしまって、ホントにごめんなさい」
再び頭を下げる。この人は謝ってばっかりだな、と真思い、何とかこの空気を変えようと、話題を探した。
「えっと……そうだ! 名前、名前なんていうの?」
明るく言おうとしたのだが、少し声が上ずった。少女は突然の大声にびくっとし、そうしたことに対して顔を赤らめながら、
「ノアル、といいます。ノアル・レイグヴェインです。ノアルでいいですよ」
笑顔で言った。
「俺は駿河 真。真でいいよ」
真も笑顔で返す。するとノアルは一瞬、考えるような顔をし、
「この辺ではあまり聞かない名前ですね。それに、えっと、ファーストネームが真、ですか……?」
「そうだよ? あぁ、そっか、じゃあ、僕は真 駿河だね。こっちでは苗字が先だからつい……」
「やっぱり遠くから来られたんですか?」
何も考えずに『こっち』などと言ってしまった真は、ノアルの問いに口ごもる。なんて答えたらいいんだろう、考えた揚句、
「まあ、そんな感じかな。遠くから、ちょっとね」
曖昧な返事でごまかした。本当のことを話すと長くなるだろうし、実際、真にも『本当のこと』など説明できない。
ノアルは「すごいですね~」などと笑っている。どうやら元気を取り戻したみたいだ。
真の重かった頭も少しずつ回復しだした。真は状況を確認しようと辺りを見渡すが、異常なまでの霧で何も見えない。背後には崖がかろうじて見え、真とノアルがいる地面は緑の芝が茂っている。
「それにしても、凄い霧だな」
真は呟いた。
「そうですね。来たことはなかったんですが、こういうところがあるっていうのは聞いたことあります」
ノアルも辺りを見渡す。
「時間が経てば一時的に消えるらしいので、もうちょっと待って見ましょう」
「たしかに下手に動くと危ないな」
どのくらい待てばいいのだろうか。二人は思った。しかし、待つ以外ないのだ。
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