追走

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しかし、濃霧は消える気配を見せない。ふと、ノアルが口を開いた。 「そうそう、さっきから聞きたかったんですけど、あの時試合に飛び入りしたのって真さんですか?」 「えっ?」 そういえばそんなこともあったなと、真は遠い昔を思い出すように、 「あぁ、あれは飛び入りとかそういうのを狙ってたわけじゃなくて、なんというかその……迷っちゃって、いつの間にかあそこにいたっていうか……」 言葉につまりながら答えた。 「やっぱりあなた達でしたか。さっきもう一人いるって聞いて、確信しました。それにしても、飛び入りじゃなかったんですね。でも、エールさんと互角に戦うなんて凄いですよ」 「エールさん?」 「あぁ、あなた達と闘ってた剣士の方です。結構有名で、今回の優勝者だったんですよ」 「へぇ~」 駄目だ、聞きたいことが多過ぎる。真は必死に頭を整理する。優勝ってことはやっぱり大会だったのか、それで―― 「えっと、優勝者ってことは、あの時はもう全部終わってたの?」 「そうですよ。決勝を終えて、倒れた相手が外に運ばれて、その直後くらいにお二人が。それはそれは謀ったようなタイミングでしたよ」 ノアルは終始笑顔で答えた。真は「うわぁ」とうめきながらうつむいた。なんて絶妙なタイミングで会場に入ってしまったのだろう。 それを見たノアルは、 「でも、すごかったですよぉ、本当に。エールさん決勝も圧勝だったのに……お二人とも、強いんですね」 励ますように言う。真は顔を上げる。 「活躍してたのは俺じゃないよ。もう一人の方がすごかったから」 「いやいや、すごかったですよ。雷が直撃したときはもう駄目かと思いました」 「あの時は必死で……あんまり覚えてないんだよね」 真は思ったままを述べた。 「結局最後はどうなったんですか?急に爆発音がしたかと思ったら、いつの間にか……」 こんなことになっちゃってまして……と苦笑い。真はなるべく詳しく語ることにした。 「えっと、そのあとに、君のいたあたりの席がすごい光を放ったんだ。何が起こったのか分からなかったんだけど、その光に気を取られた……えっと、エールさん?に俺の友達の攻撃が当たって、そうそう、あの電気の。それで、エールさんが倒れる直前に魔法を使ってくれて、その魔法のおかげでここまで追いかけてこれたんだ」 多少内容がごちゃごちゃになったかもしれないが、何とか伝わっただろう。
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