――船内にて

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静かな夜に思えていた。 窓に映るは深海。 思うよりも――船内は痛い程に静かだ。 さて、思い出話である。 若い頃、質屋で見つけた古いクラッシックギターに憧れた。 働き、積立てた貯金で其れを買い、無我夢中で練習したものだ。 日が暮れる頃に街へ繰り出し、そこで音を披露する毎日。 2人、3人程度の観客だったが――自らの音に耳を傾けてくれた事が嬉しかった。 売れなくても良い、一握りにでも感動を与える事のミュージシャンになりたいと―― 気づけば、そんな夢を追っていた。 .
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