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「うわっ!」
光が部屋を包んだ後、不思議な感覚が空斗を襲う。
まるで空を飛んだような、それでいてゼリーの上を歩いているようななんとも言えない感覚。
それは一瞬であったが、平衡感覚を彼から一時的に奪いさったらしく、再び地に足が着いた時空斗はよろけて転んでしまった。
そして更なる追撃、吐き気が襲ってくる。
「……う゛。」
「あ、吐いたら自分で掃除ですから。」
クワイトには労りの気持ちは無かったらしい。
「うぅ、耐えろ、俺の体。」
「行きますよ~?」
クワイト=鬼畜。
空斗の中でクワイトの位置付けはそう決まり、まだ気持ち悪いままだが彼の後を追っていった。
追って行くうちに、だんだんと今いる場所が馬鹿でかい建物という事がわかってくる。
高い廊下、その窓から見えるのはグラウンドのように見える円形の地、尤もその大きさは広すぎるが、そして反対の窓からは教室のような部屋。
ここはおそらく学校であろうことは容易に想像できた。
しかし、人が一人もいない。
廊下も、グラウンドも、教室も、誰もいないのだ。
歩くうちに気分が悪いのが軽くなった空斗はさっそくクワイトに尋ねる。
「ここ、学校か?
そうだとして、何で誰もいないんだ?」
「ええ、ここは学校です。
誰もいないのは、今がそちらでいう春休みだからですよ。
何故ここに来たのか、それは……。」
歩きながら答えるクワイト。
今更だが、歩幅の関係で空斗はゆっくり歩いているのに対してクワイトは速歩きだ。
「それは?」
空斗は先を促す。
するとクワイトは立ち止まり、空斗の方を向いた。
「それはこちらで聞いてください。」
立ち止まった場所にある扉の上には『学園長室』と書かれていた。
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