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AM00:22
食事を終えたブレイクは、自分の部屋に戻っていた。
「ふぅっ……」
部屋に戻り、電気も点けずに、真っ先にベッドに向かい、大の字で寝そべる。
(シュランツ……)
真っ暗な天井を瞳に入れたまま、今は亡き執事の事を思い出していた。
一滴の涙が仰向けになった顔をつたい、枕を濡らす。
それを部屋着の裾で拭うブレイク。
(シュランツは、一体何を知ってたんだろう。
俺の命が危ないって言ってたみたいだけど……。
何で分かった?
もしかして、未来予知とか?
あほらし……。
エスパーじゃあるまいし、あり得ないだろ。
未来の事なんて、誰にも分かる訳無い……)
そこまで考えると急に、真顔でベッドから飛び起きた。
(いや、分かる!
あの出来事があらかじめ起きる事を知っている人間がいたんだ。
勇者イサ!
イサは博物館の事件の後、過去に戻ってきっと未来にバルジャーモが現れる事を誰かに伝えたはずだ。
俺を守る為。
いや、チキが再びホーンに支配されない様に。
だからもしかしたら、シュランツはその話を聞いたんじゃないのか?
イサから直接聞いたとかじゃなくても、間接的に――)
「あっ!?」
突然、何かを思い出した様で、思わず声をあげるブレイク。
キングサイズのベッドから降りる。
入り口付近の壁に取り付けてあるスイッチをONにして、明かりを点けた。
「あった」
PCの液晶モニターやキーボード、マウスが載ったデスクの一番上の引きだしを開ける。
その中に、昨日ドラゴンハート家から譲り受けたBEFORE OR AFTERの入っている指輪ケース。
それと携帯用のメモリーカードが置かれていた。
迷わずメモリーカードを取り出すと、自分の携帯電話に入っていたメモリーカードと交換する。
「動画だ。
あのノイズ混じりの酷い動画……」
携帯電話のボタンを押す親指に、妙に力が入る。
動画フォルダの中に入っていた『BEFORE OR AFTER 使い方』と書かれたデータを再生した。
携帯電話の小さな液晶画面に、ドラゴンハート邸の前で突っ立っている勇者イサの姿が映る。
だが、そのシーンには用が無い様で、ブレイクは映像を早送りしていった。
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