AM00:00~ 執事の死

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「シュランツ!」 「何ですか、ぼっちゃま?」 まだ6歳の幼いブレイク。 カチューシャで髪を止めておらず、今と比べて髪の毛は幾分か短い。 今より少しだけ若いシュランツの足元にしがみついて顔を上に向ける。 「シュランツって、昔軍隊で戦って、悪い奴らを倒しまくってたんでしょ?」 「ぼっちゃま?」 「お願いシュランツ! 僕を強くして! 学校でテストの点が悪くて、みんな僕を馬鹿って言うんだ! 何も悪い事してないのにぶたれた! 僕悔しいよ! だから悪いやつをやっつける方法を教えて!」 「いけませんよぼっちゃま。 暴力で解決しようとしては、ぼっちゃまもその人達と何ら変わりありません。 旦那様が家庭教師を雇って下さっているのです。 勉強で良い成績をとって見せつければ、きっとぼっちゃまを馬鹿にする人なんかいなくなりますよ」 「嫌だ、勉強なんかしたくない! お父様は僕が勉強したくないって言うのに、無理やり勉強させるんだ! そんなのより、喧嘩で勝てるコツ教えてよ!」 「はぁっ……。 仕方がないですねぇ、それじゃあぼっちゃまがテストで百点をとれたら教えて差し上げます」 「本当にッ!」 「はい。 ただし、自分の身を守る時にだけしか使ってはいけませんよ。 約束出来ますかな?」 「うん! 約束する! やられた時にだけ使う!」 幼き日の記憶を思いだしていたブレイク。 閉じた瞼からとめどなく溢れ出る涙は、枕を濡らしていた。 「何が約束するだ……。 使ってんじゃねぇか……。 最低。 クズッ……」 溢れ出す涙を拭う事なく、無意識に呟きながら、布団にくるまる。 「シュラン、ツ……。 教えてよ……。 シュラン……、ツ……」 明かりがついたままの部屋。 いつのまにか、呟きは寝息に変わっていた。
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