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広いリビングの壁に立て掛けられた亜麻色の大きな時計が12回。
時を告げる為に低く伸びた音を鳴らす。
その音が鳴り響く最中。
テーブルに座っていた4人は、全く声を漏らす事なく微動だに動こうとしない。
作りたてのコンソメスープの湯気が、ゆっくりと上に昇る。
そして時報が鳴り止み、沈黙が辺りを包む。
悲しげな表情を浮かべるガバ、ハピ、ロッテルの3名。
ハピは今にも泣き出してしまいそうな顔を作っている。
そして、ただ1人。
握っていたナイフとフォークをテーブルに置き、口を半開きにして驚愕の表情を作ったままピクリとも動かないブレイク。
何か声を発しようと唇を動かそうとするのだが、ふるふると痙攣(けいれん)し、中々思うように声を出せない。
「……へ?
う……、え?
死、んだ?
シュランツが?」
やっと絞り出したその声を聞き取ったガバは、神妙な面持ちで静かに首を縦に振った。
「うぅ……、あぁぁ……」
今まで我慢していたハピが、耐えられずにすすり泣きを漏らす。
それにつられるように、ロッテルまで瞳を潤ませ、2人共ハンカチで涙を拭う。
すすり泣く2人を余所に、ブレイクはいつも自分を車で送り迎えしてくれた執事を思い浮かべていた。
あの優しくも心配性な執事が、もうこの世にいないなんて信じられない。
否、信じたくない。
その真相を確かめる為、父親に問いかける。
「そんな!?
なんで!?
なんで死んだんですか?
……やっぱり、博物館崩壊のせいで?」
「いや、知ってるだろう。
バルジャーモが博物館に現れたのは……」
「はい……」
思い出したくもない恐怖の化物。
「シュランツは殺されたんだよ。
あのおぞましいホーンに」
「殺され……、た?」
父親の回答に違和感を覚えるブレイク。
何故なら、彼は実際に現場にいたのだ。
バルジャーモが掌から放ったどす黒い光が、博物館の警備員達を人から物へ変えた瞬間。
だからこそ生じた疑問。
あの場にシュランツはいなかった。
なのに、何故父親は執事が殺されたと断言出来るのだろうか?
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