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「博物館で、お父さんが沢山の取材記者の人達に囲まれてた時。
私とシュランツは、その集団から少し離れた所でレプリカや歴史資料を観賞していたの。
初めのうちはシュランツも、楽しそうに眺めていたのだけれど」
そこまで語ると、瞳にあてていたハンカチをテーブルに置き、一度呼吸を整え再び口を開く。
「突然だったわ。
何故だか分からないのだけれど、慌てだしたのよ。
急に唸って、『何でもっと早く気がつかなかったんだ』、とか大声でそう言うから、私本当に驚いちゃって……。
だから聞いたの。
大丈夫?って。
そしたらシュランツ、真面目な表情でこう言ったのよ」
潤んだ瞳に視線が合わさり、無言で唾液を飲み込むブレイク。
「『もしかするとここに凶暴なホーンが現れるかもしれません。
今すぐに避難して下さい』
って……」
「なッ!?」
思わず口を開き声を漏らす。
「お母様ッ!
あの、それって、もちろん、バルジャーモが現れる前の事ですよね?」
「えぇ……」
気が動転し声を荒らげる息子の問いに、冷静な口調で答える母親。
(って……。
何で……?
シュランツは、バルジャーモが現れる事を知ってた!?)
刹那。
脳内にシュランツの記憶が蘇る。
(まてよ……。
そういえば、博物館の日の前日。
朝食の時。
そうだ、俺が見た夢を皆に話した時だ)
事件の前日の朝食時の会話を思い浮かべるブレイク。
(あの時のシュランツは、1人何か考え事をしてた。
俺のあり得ない夢の話を、昔どこかで聞いた事があるとか言ってたけど……。
思い出したのか!?)
「……それで、どうしてホーンが現れるなんて言えるのって、尋ねたら。
『もしかしたら自分の思い違いかも知れないです』って……」
相槌も打たずに黙々と考え事をしていると、勝手にハピが続きを話し始めた。
「それで私困っちゃって、本当にホーンが現れるか分からないのに、避難するわけにはいかないわって……。
本当に……、ヒグッ。
あの時に、素直に、シュランツの言う通りにしていれば……。
うぅ……。
シュランツだけじゃない、もっと沢山の人達を救えたのよ」
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