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再び溢れだす涙を拭う。
「お母様、それは仕方がないですよ……。
確証も無いのに、大勢の人を避難させるなんて無理です。
だから、自分を責めないで」
「あっ……。
ひっ、うぅ……。
ありがとう、ぅ。
ブレイク。
あぁああああッうぅッあッ」
ハピは、ブレイクのその言葉に救われたかの様に号泣する。
「大丈夫だよハピ」
「うぅッ……、グスッ……」
泣きじゃくるハピの頭を、隣に座っていたガバが優しく撫でた。
「そういえば、ブレイク。
バルジャーモに襲われる前に、シュランツから電話は来なかったか?」
「えっ?
いえ。
どうしてですか?」
ブレイクの疑問を耳に入れて、ガバは号泣するハピをちらりと目にいれた。
どうやら、自分が話すべきか悩んでいるようだ。
「シュランツがな、避難するように催促した後、ハピにこう言ったらしいんだ。
『万が一、勘が当たっていたとしたらブレイクが危ない』とか。
それで、ブレイクの所に行くって勝手に何処かに行ってしまったらしいんだが。
まさかあの広い博物館を何の当ても無く探し回る訳がないと思って、てっきりブレイクに電話したんだと思ったんだがなぁ」
「電話……。
もしかしたら電波が悪くて繋がらなかったとか、ですかね?」
そう言いながらブレイクは一応念のため、携帯電話の着信履歴を確認する。
「あれ!?」
3日前の着信履歴。
それを見ると、シュランツの着信履歴がきちんと記録されていた。
「ありました。
3日前の午前10時57分。
シュランツから電話がきてる。
全然気が付かなかった……」
その時、ブレイクはたまたまシュランツからの電話に気がついていなかっただけだと思っていた。
「10時57分。
そうか、事件が起こる6分前だ。
やっぱり電話していたのか……」
「6分前――」
だから何の気なしに、思い出していた。
バルジャーモが現れる6分前の出来事を。
「あッ……!!」
蒼白。
体中に鳥肌が立ち、呼吸が荒くなる。
「どうなさいました?
ぼっちゃま?」
全身小刻みに震えだしたブレイクを按じ、ロッテルが声をかける。
(思い出した……。
あの時だ……。
ポケットの中で震えてたのに……)
ギリギリと強く歯を噛みしめて、左手で自身の両眼をおさえるブレイク。
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