AM00:00~ 執事の死

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バルジャーモが博物館に現れる6分前。 ブレイクは、同じクラスの女子と非常階段にいた。 相手はバニッサ。 そこで、2人は口づけを交わしていた。 「俺のせいだ……。 うっ……、くっ……。 なんて……。 最低だッ!!」 右拳を強く握りしめる。 その拳は、尋常ではない程に震えていた。 色情渦巻き、一時の快楽に身を委ねた挙げ句、着信した事を忘れていたのだ。 自責。 後悔。 慚愧。 自分がもしあの時、着信した電話に出ていればと考え出すと、罪の意識に押し潰されそうになる。 「ブレイク? 大丈夫か?」 両眼を覆い隠したブレイクの手から、液体が流れ落ちるのが見える。 「最低だ……。 お父様……。 俺は……。 最低、です。 ……他の事に夢中になってて、電話を無視したんです」 そう話し終えた途端。 「ウァアアアアァアッ!!」 自身の両手で顔中を思いきりもみくちゃにし、慟哭(どうこく)する。 (最低だッ!! 自分で自分が嫌になるッ!! 俺はクズだッ!! クズッ!!) 「ブレイクッ!! おぃッ!! ブレイクッ!! 落ち着くんだッ!!」 ブレイクの対面に座っているガバが、錯乱している息子が心配で呼び掛ける。 「ブレイク?」 「ぼっちゃま?」 続いてハピとロッテルが声をかける。 隣に座るロッテルは、ブレイクの肩を揺らす。 が、それでも大声で叫び泣くのを止めない。 (俺が電話に出てれば、もしかしたらシュランツは死なないですんだんじゃないかッ!? 俺のせいだッ!! 俺が殺したも――) 「ブレイクッ!!」 一喝。 発狂したように慟哭するブレイクの声を遥かに凌ぐ大声でそう叫んだのは、なんと先程まで涙を流していたハピであった。 「お、母様?」 母親の声に、ハッと正気を取り戻し、もみくちゃにしていた手を離す。 その瞳の色は真っ赤になっていた。 「ブレイク。 もし自分が電話に出なかった事でシュランツが死んだと思っているのならそれは違う。 あなたのせいじゃない」 「お母様……」 さっきまではシュランツが避難を勧めたのを断った自分を責めていたのに、息子が同じ立場に陥ったら腹の底から声を出してそれを否定した。 なんて強い人だ……。 ブレイクは溢れでる涙を流しながらそう思った。
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