第三章

8/8
前へ
/89ページ
次へ
早朝五時。 ふと目覚めて彼女を見る。 彼女はいつから起きていたのか天井をじっと見ていた。 「体調大丈夫か?」 俺が力無く言うと「君よりはね」と彼女は答えた。 少しの間沈黙が流れた。 見知らぬ女性が家に居て、しかも2人っきりというのは予想以上に緊張する。 身がもたない。 俺は彼女を家に連れてきた事を少し後悔した。 「それと、ごめん」 沈黙を割いて彼女が言った。 「巻き込んだ」 彼女は天井から俺に視線をかえて言った。 黙っているしかなかった。 スクーターと荷物は爆発し、死ぬ思いをし、彼女を背負って五キロ…。 巻き込まれてひどい目にあっている。 「あ…あ~、気にするな」 とりあえず、そう答えた。 過ぎた事は仕方がない。 そう思うようにした。 「本当にすまない」 もう一度彼女は謝罪した。 「巻き込んだ以上、私には事情を教える義務、君には知る権利と必要がある」 そう言うと彼女はむくりと上体を起こした。 「信じられないかもしれないけど最後まで聞いて。お願い」 俺はコクリと頷いた。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加