第一章

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「何、これ?爆弾でも入ってんのかな?」 唐突に俺の右手が軽くなる。 「はしゃがないで下さい。いくら先輩でも怒りますよ」 「怒るなら怒るがいい。しかしそこからは憎しみしか生まれないぞ」 バイトでも学園でも先輩である早瀬沙希はワケの分からない事を言って袋からフィギュアを取り出した。 「うへー!フィギュア!もう萌え萌えだね」 早瀬先輩はフィギュアを頭上に持ち上げくるくるとまわった。 「壊さないで下さいよ。それ、預かっているんですから」 そう言うとメリーゴーランドの如く回っていた早瀬先輩がピタリと止まり「ほうほう、じゃあ誰のかな?おじさんに言ってみな」と低めのトーンで言った。 「坂田っす」 「あ~坂田君ね」 そういうと早瀬先輩はフィギュアを机に置き「面白くないじゃん!!」と雄叫びを上げた。 「何だよいつものことじゃんか。もうちょっとネタ考えてこいよぉ加藤ぉ」 そういうと早瀬先輩は頭を抱えまたくるくるとまわり始めた。 「俺のせいですか?」 「加藤修魔とあろうものがネタも用意せずにくるとは言語道断。」 「ネタって…」 「大体坂田君はどうしたのよぅ」 「なんか好きな声優のサイン会があるからと…」 俺はそういうとチラッとフィギュアをみた。 「なるほどねぇ。変な友達もつとツラいね~」 「まあ、そうですね」 「じゃあ、私の分の仕事もよろ」 「ちょっとなんでですか!」 「ネタを用意してなかった罰。そして、」 早瀬先輩はくるりとまわり長い髪をふわりと浮かせ「私も変な友達その一だから」人差し指を口元に持っていって言った。image=218117633.jpg
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