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―一週間後―
柊「ふあぁぁぁ~」
大きなあくびをしながら、柊一は京都に来ていた。
老舗旅館がずらりと立ち並ぶ坂道を登っていき、頂上に辿り着いた。
頂上には7階建ての小綺麗な旅館が建っており、旅館の入口前に見慣れた老紳士が立っていた。
?「おぅ、来たか柊一」
手を振って出迎えてくれたのは、現在京都に住んでいる柊一の祖父―飛鳥井雅春だった。
春「元気にしてるか?」
柊「はぁ…まぁ…」
春「はっきりしない返事だなぁ」
柊「ところで、一体何の用で呼んだのですか?ただ『京都に来い』って言われてきただけで…「
春「まぁ待て。もうじき“あの子”が来るから」
柊一は、他にも京都に来させたのかと、呆れた顔をしていた。
数分後、柊一が登ってきた坂道から、ゴロゴロと何かを転がす音が近付いてきた。
よく見ると、先週御霊部の事務所に入ってきて、文句を言ってきた女子高生―藤川夏樹が、コロ付きの小さな旅行カバンを引っ張りながらこちらに向かってくる。
柊「いっ!?」
柊一は、なんでここに来るんだと焦り、隠れる所を探していた。
だが、祖父のたった1言で、動きが止まった。
春「君が夏樹ちゃんかい?」
夏「飛鳥井さん…ですか?」
春「いかにも、ワシが飛鳥井雅春です」
夏「はじめまして、藤川夏樹です」
春「礼儀正しいなぁ。ワシの孫と大違いだ」
夏「孫…?あ…」
雅春のそばでキョロキョロしている少年を見た。
夏「貴方、この間の…」
柊「あ、あはははは。どうも…」
柊一は引きつった笑顔で夏樹に挨拶した。
柊「おじいさん、藤川…さんとはどういう関係で?」
春「夏樹ちゃんのおばあさんとは、古い友人でな。いや~、若い頃のまさちゃんにそっくりじゃ。礼儀正しいし、可愛らしい」
夏「そ、そんな…」
夏樹の頬が少し紅く染まった。
何処が可愛いんだと柊一が小さく呟いたが、祖父が背中と抓ってきた。
柊「いてててっ!!」
春「さぁさぁ、こんなところで立ち話も止めて、中に入ろうか」
雅春は旅館に入っていった。
夏樹は雅春についていき、柊一の顔を見て、
夏「フンッ!」
夏樹は柊一に顔を背けた。
この間も顔を背けられ、これで2度目になる。
柊一は怒り寸前だったが、気を落ちつかせて2人についていった。
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