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旅館に入ると、ここの女将らしい人が出迎えてくれた。
女「いらっしゃいませ」
春「飛鳥井ですが…」
女「お待ちしてました。どうぞこちらへ」
春「じゃあ、ワシはここまでじゃ」
柊・夏「えっ!?」
柊一と夏樹の声が重なった。
ここで急に帰るなんて、思ってもみなかったからだ。
夏「ちょ、ちょっと待って下さい!どういうことですか!?飛鳥井さんから依頼してきてくださったのに、もう帰るなんて…」
春「実はの、依頼はここの女将からなんじゃ。詳しいことは女将に聞いてくれ。ワシはここまでの案内をしただけじゃ。じゃあ、後は頼みましたぞ」
女「かしこまりました」
雅春は旅館から出ていった。
女「さぁ、お2人方。こちらへどうぞ」
女将ともう1人の仲居さんが柊一たちの荷物を持ち、部屋に案内してくれた。
女「こちらになります」
部屋の窓からの景色に見惚れていた夏樹は、女将の言葉が耳に入ったのか景色を見るのを止めた。
女「こちらがお2人のお部屋になります」
女将の言葉を聞いて、部屋の中は沈黙になった。
しばらく経ってから、
柊「えぇぇぇぇ!!」
夏「そ、そんな…わ、私、別の部屋に…」
女「申し訳ありません、飛鳥井様がお2人とも同じ部屋にしろと…。それに、予約が入っているお客様もいらっしゃるので、急に変更するわけには…」
夏「そ、そんなぁ~」
柊一は、祖父の企みが分かった。
同じ部屋で仲を深めろ、ということだ。
柊一の祖父は、御霊部の関係者だか、能力を持ってないので御霊部の一員ではない。
だが、御霊部の部長とは昔からの友達で、今も時々会っているらしい。
祖父は、『跡継ぎを作れ!!』と、うるさい。
つまり、結婚して子供を作れと耳にタコが出来るぐらい言われている。
柊(なるほど、2人とも能力を持っているから跡継ぎを…って違うだろ!)
女「では、ごゆっくり…」
女将たちが部屋から立ち去ろうとしていた。
夏「あ、あのっ!」
夏樹が女将たちを引き止めた。
女「わ、私は依頼があって来たんです!!依頼内容を教えていただけますか?」
夏樹の言葉で、女将たちの顔色が変わった。
女「…案内いたします、こちらです」
女将たちは一旦部屋を出た。夏樹はもう一度靴を履いた。
柊一もついて行こうとしたが、ピシャリとドアを閉められた。
この時、柊一のプライドが一気にボロボロに崩れていった。
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