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部屋の中は、わずかに鉄のような臭いがする。
部屋の奥に入っていくと、異臭が強くなっていき、頭がクラクラする程キツイものだった。
その時、隣の部屋から気配を感じた。
襖で閉められているが、次第に襖がカタカタと鳴りだした。
廊下に立っている女将もそれを見て、身体が跳ね上がった。
夏樹は勢いよく襖を開けると、中には男と見られる怨霊が黒い霧を纏ってうずくまっていた。
夏樹はポケットから数珠を出し、手に絡ませた。
夏「オンサウトウジマトウギソワカ…ハッ!!」
夏樹が呪文を唱えた時、怨霊は姿を消した。
女「い、今のは…?」
夏「この部屋で自殺した人でしょう。強い怨念を持っていましたから…」
女「じゃあ、あれで…」
夏「いえ…逃げられました。でも大丈夫です。明日、本格的に除霊と、この部屋のお清めをします」
女「あ…ありがとうございます」
女将は安心したのか、強張っていた顔がほぐれ、夏樹たちは自分の部屋に戻った。
しかし部屋に入ると、誰もいなかった。
夏「あれ?」
何処に行ったのだろうと探していたら、仲居がやってきた。
仲「お連れの方でしたら先程、温泉の方に行かれましたよ」
夏「温泉?」
女「ここの温泉は疲労回復に神経痛、関節痛に効くんです。それに、お肌もスベスベになりますよ。先程のお祓いで疲れていると思います。よかったら温泉に入ってきて下さい」
夏「ありがとうございます」
夏樹はタオルや着替え、シャンプーなどの道具を袋に入れ、女将たちに案内してもらった。
女「こちらになります。どうぞごゆっくり」
夏樹は脱衣場に入っていった。
彼女は気付いていないが、女将たちの後ろに『混浴場・女性脱衣場』という看板があったが、女将たちは何故か隠していた…。
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