ありえない依頼

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?「あ゙ぁ゙~」 露天風呂で、オヤジのような声をあげているのは、前髪だけがレモンイエローに染まっている1人の男―楠木誠志郎だった。 彼は陣内エリ子や有田克也と同じ、ヤミブンの一員…正確に言うとアルバイトだ。 彼はこの京都で仕事があり、思ったより仕事が早く終わったので、この旅館に泊まることにした。 そして今、この旅館の温泉に入っている。 誠「いいね~温泉って☆疲れが取れるよ」 今は誠志郎しかいないが、しばらく経ってから1人の客が入ってきた。 ここは一応挨拶しておいた方がいいかなと思い、客が近付いてきたところで挨拶をした。 誠「こんにちは」 柊「あ、こんにち…ぇえっ!?」 誠「えぇっ!?」 温泉に入ってきた客は、顔見知りの人間だった。 柊「なんでお前が…」 誠「鈴男こそ…」 柊「鈴男じゃない!飛鳥井だ!!」 柊一はいつもヤミブンのメンバーから“鈴男”と呼ばれている。 理由は、柊一は飛鳥井家に伝わる呪具である鈴から来ている。 その呪具は、赤い組み紐に赤銅色のあめ玉大ぐらいの鈴がいくつもついている。 柊一はこれを使って御霊を鎮魂したり、時にはダウンジングにも使われている。 そのせいか、鈴男と呼ばれている。 柊「なんでお前がいるんだ!?」 誠「僕はこの辺で仕事があって、早く片付いたからここに1泊することにしたんだ。ちょうどキャンセルになった部屋があったから…」 柊「ふーん」 誠「そういうお前はなんでここにいるんだよ」 柊「僕のじいさんに呼ばれてきたけど…もう帰ってしまった。ったく、何考えてんだあのじいさん!」 お互い大変だなとしみじみ感じていた誠志郎だった。 もういいやと思ったのか、柊一も温泉に浸かった。 柊「ぁ゙あ゙~」 誠「プッ!!オヤジ臭い」 柊「う、うるさい!!」 それから沈黙が続いていたが、誠志郎がある異変を感じた。 額が熱くなり、前髪を触ってみた。 前髪は熱を持っていて、温泉のせいではないと知った。 そして柊一も、その異変に気付いた。 誠「何か…“気”を感じる」 その気は温泉の奥の方から発していた。 柊一たちは奥へ行ってみることにした。  
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