139人が本棚に入れています
本棚に追加
柊一が出て行って数分後、女将たちがやってきて料理を片付けてもらい、布団も敷いてくれた。
もちろん、隣の部屋にも自分用の布団を敷いてもらった。
夏「明日も早いし…そろそろ寝ようかな」
夏樹はカバンから洗面道具を取り出し、洗面所に行こうとした時、外からノックされたので、返事をしながらドアに向かっていく。
ドアの前にいたのは、露天風呂で柊一と偶然一緒にいた誠志郎だった。
夏「…何か用ですか?」
誠「あ、あの…飛鳥井いるかなぁ?」
夏「いませんけど」
あっさり断られたので、誠志郎も何も言えなくなってしまった。
誠「あ、あのぉ…」
夏「何ですか?」
誠「さっきは、その…ゴメン」
夏「別に気にしてませんから」
充分怒ってるよという顔をして言った夏樹だった。
誠「…飛鳥井、何処に行ったか分かるかい?」
夏「さぁ?鎮魂が下手だって言われたから修行してるんじゃないですか?」
誠「…飛鳥井は下手じゃないと思うけど」
夏「え…?」
誠「僕が言うのもアレだけど、鎮魂の方法って人それぞれだと思うよ」
夏「…」
夏樹は何も言えなくなってしまった。
その時、部屋の明かりが急に消えた。
誠・夏「え?」
2人は驚き、辺りを見回した。
停電になるのだったら女将たちがやってくるはずだが、誰も来ない。
夏「っ!?」
夏樹は、異様な気配を感じた。
昼間、女将に案内してもらった部屋と同じ…いや、それより強くなっている。
夏「これは…」
誠「あ、飛鳥井!!」
誠志郎は柊一がこちらに近付いてくるのが見えた。
誠「よかった、今停電…!!」
誠志郎は柊一の異変に瞬時に気付いた。
フラフラしていて、手には調理場から拝借してきたのか、勝手に持ってきたのか、包丁が握られている。
目は虚ろで、まるで操られている感じだった。
最初のコメントを投稿しよう!