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とある地方で、夜になると女の霊が出るという噂の城がある。
その城は昔、城を建てる時、神の捧げ物として城の姫君をそこに埋めたと言われている。
今はその城は観光地になり、客も来るが、夜な夜な女の声がするという。
ある夜、そんな不気味な城の公衆電話のボックスに入っているのは…1人の少年。
彼―飛鳥井柊一は、"御霊部"の仕事でこの地方にやってきた。
御霊とは、非業の死を遂げた怨霊が神として祀りあげられたもの。
その御霊が暴走しないように監視を職務とした集団を御霊部という。
その歴史は遥か昔、奈良時代から続いており、そんな古い歴史を持つ御霊部に、まだ高校生である柊一は所属している。
しかも柊一は、御霊部の中でも最小年で、実力もかなりいい…が、先程引き返したところだった。
幽霊の噂がある城に入った柊一は、早速、噂の姫を発見したのだが、展示コーナーにある鎧が襲いかかってきた。
訳が分からなくなった柊一は、一度引き返した。
そして今、近くの公衆電話で電話をかけている。
早く出ろと訴えていたが、すぐに出てくれた。
?《はい、日本民族学調査研究会…》
柊「雅行、僕だ」
雅 《あぁ、柊一か。お勤めご苦労様》
電話に出たのは、同じ御霊部の多能雅行だった。
柊「まだこんな時間までいるってことは、またオンラインゲームでもやってたんだろ。あのなぁ、部長が年寄りで機械に疎いからって、あんまりやりすぎるのも…」
雅 《あぁ、今はやってないから大丈夫》
『今は』ということは、それまでやっていたということだなと、柊一は確信した。
雅 《ちょっとお客さんが来てるんで、話し込んでたんだよ》
柊「ふぅ~ん。あ、それはそうと、実は…」
柊一は先程の出来事を全て話した。
雅 《なるほど…。じゃあ明日はサポートしよう。もし行けなかったら、誰か代理を差し向けるぞ》
柊「代理ぃ!?」
柊一は妙な声を出した。
御霊部は自分と雅行と部長の3人しかいないのに…。
雅行が行けなかったら、部長しかいない。
柊「お、おい、部長は勘弁してくれよ!?鎧武者が出てきたっていうのに、そういうのを年寄りに相手さすなよ!!」
雅 《誰も部長とは言ってないだろ。とにかく、詳しいことは明日連絡する。お客さん待たせてるしな、じゃあな》
雅行はそう言って電話を切った。
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