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オレは湖底にいた精霊アリウス君をつれて森の中をさ迷っていた。
砂漠に倒れたオレをまるで助けるかのように忽然と現れた巨大な森。
天は高く、葉の間から光りが漏れて、地面の砂地にまだらを作る。
オアシスとも言えない。これはまるで山が出現したかのよう。
砂の中から木が生えている奇妙な光景。矛盾したそれは生物が生きるのに不可欠な水というものを何処から供給されているのだろう。
あの湖から?
根の太い大木がみずみずしい緑の葉を茂らせている。細長い大きな葉は太い葉脈を巡らせ葉裏から水を放出させ、空気にしっとりとした水分を含ませる。
地面からつんつんと顔を出している草達は、日の当たらない涼しい砂地で涼んでいるようだ。
ざくざくと砂と草を分けてすすむ。
どうやらアリウス君のいた棺桶を破壊した時に出た水流がオレの荷物を流してしまったらしく、大事なポーチが見つからない。
なんてことだ。死んでもいいとか思った。
そのせいでかなんだかしらないが後ろの彼はこちらのご機嫌を伺っている。
疲れてませんか?暑くないですか?ブーツだけでも見つかってよかったじゃないですか。
ほら、あそこにマントが……あれ上着じゃないですか?
食べるもの、ありませんかねぇ……。
「…うざったいわぁ~!」
「はい!?」
……さっきからいらんことをぶつくさぶつくさ…
あぁ、怒ったら血が昇って頭が痛いわんっとに…。
「キャロルさん、鞄はたしかに大事なものかもしれませんが、砂に埋もれてるとかですと、探すのが難しいですよ。」
「馬鹿っ!絶対見つかるの!でもそれも一理ある。
アリウス君、棺桶から出した水もっかいぶわーって流して、そこら辺の砂流してよ。」
オレはぶわーと両手を広げてみせた。
「わかりません。」
彼は無表情で言った。
「何で水があんなに湧き出たのかわかりません。僕は力を持っていないんで、あの現象をもう一度というわけには…」
「役に立たない精霊っ!てめぇはさいあくーさいあくーっ!」
「あの…その顔で乱れた言葉遣いをされるととても残念です……。」
……むう。
「じゃあ仕方ないから、オレ砂掘って見つけるから。お前は力がないんだろ?黙って見ていろよ」
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