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ざくざくざく……
なんか似たような感覚をしばらく前にも経験した。
どこまでいけども同じ風景で、先に進んだ感じがしない。
見える景色は、砂から生えた樹木達。
ただの緑色しか見えないその景色にはそういえば花が咲いているのを見たことがない。
この砂漠はゴールデンサンドとプラスチックサンドをはさんだそんなに広くない砂漠だ。
歩いて一日でわたれる距離なのだ。
そういえば、この砂漠には商人も自由に行き来しているはずだ。
そんな砂漠に突如このような巨大な森が出現したのだから、その日のうちに調査隊のようなものが来てもおかしくないじゃないか。
うん、その人たちに助けてもらえないかな。
ついでにこの精霊君も面倒見てくれないかな。
うんうん。
「ねぇ、キャロルさんは家族はいますか」
「いたよ。母親は死んだし兄貴は蒸発中。」
「お父上は?」
「そんなやつら知らね。」
「やつら?複数ですね。」
もう…。どうだっていいじゃないか。そんな母の趣味なんて。
「しらねぇ!」
オレは、暇をもてあまして話しかけてくるアリウス君を振り切って走り出した。
オレには母親がいた。
兄がいた。
オレが覚えているのは、剣の継承儀式と、幼い体でも危険箇所を歩き回れるように、魔物に対しての厳しい戦闘訓練をやったこと。
何もない。
何もなかったオレは、何かを見つけるために、旅をする。
と、不意に体が大きく地面に埋まった。
足元の砂が崩れたのだ!!
ちょ、ちょっと…
「ぅわぁ~~~~!!!!」
ざらざらと盛大に砂が降ってくる。
頭のうえに容赦なく被ってしまい、目に入ったことよりも髪の毛が汚れることが気になった。
とっさに蟻地獄のウスバカゲロウの幼虫の姿を意識したが、まさか指の先に乗るくらいの小さな昆虫がこんな人間を捕まえるほどの大きな穴を掘るものか。
足がつかずにもがきながら、
オレは砂の中に完全にうもれてしまった。
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