水滴

4/9
前へ
/73ページ
次へ
しかし今はこの状況を把握しないといけないよね。 サクサクと砂をこいで森をきびきび進んでいくよ。 不思議に地面は砂の土。こんなところに木が生えるとは普通信じられないことだよマジ。 まぁ考えられるのはこの地の古い精霊だが。 この砂漠は昔々は大きな森だった。しかし、ある日この精霊世界の「魔王」がここで「一睡」したのである。魔王が眠ったその後は見てのとおりの砂の海。 なんて、よく有りそうな仮説の話しだけど。昔話の魔王なんて今はもういないんだし魔王信仰の一部の人間が囁いているだけだし。 そこでも生き残った古い精霊がもしかしたらここにいるのかもしれない。わからない。 そんなことより、オレはこの森がなければゴールデンサンドにたどり着くまでにミイラになっていたんだろうか…。一日でたどり着く距離だと思ったから全く砂漠ということを気にしてなかった… うん、信じられないくらい暑かった……。 ふと足元にひやりとした感触。オレはびっくりして片足を引っ込め、草の間をようく見たところ、なにやら水が池のように広がっている。 「あは、水……沸いてる~!」 オレは急いで黒皮の頑丈なブーツを脱ぎその辺の枝にひっかけ、マントやポーチや着てるものを放り、肌着姿で手には背負っていた身長ほどの黒い竿をもち、池の中に飛び込んだ。 広い広い。探ると最初は池のように見えたのにまるで湖のようにとても広くて、そして中心部にいくにしたがってとてつもなく深い。 しかしとても深いのに、何故かその中心は湖の底まで明るい光りが届くようななんとも不思議な場所であった。 オレは素潜りで不思議なその湖底から地上を眺めた。 綺麗だな。 ここって一体何処なんだろうな。 しばらくそうして漂っていたが、ふと下に何か砂に埋もれた固いものがあることに気付いた。 ぷくりと口から泡が出る。 何だろう、棺桶みたいな…。名前は……。 アリウス…
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加