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『会いたかった。僕の乙女。』
ああ、あれはこの間、夢で見たキラキラ王子じゃないか。
それじゃあ、さっき待合室でキスしたのも夢だったのかもしれない。
おかしいなぁ。ファーストキスは夕暮れの公園でってきめてたのに。
「そうなの?ゴメン。」
夢の中で突然響いた声に、ふっと意識が戻った。
ガバリと身を起こした。
診察台で寝ていたらしい流宇の横には先ほど流宇に口付けた美青年が診察用の椅子に座っていた。
「あ、あ、あ、だっ!!」
あんた、だれ!?
思わずのけぞった流宇はそう呟こうとしたが、動揺のあまりまともな言葉を発することができなかった。
「流宇っていうんだ。かわいいね。」
白衣の上についている名札をなぞりながら呟くと、彼はくすりと微笑んだ。
身長182センチ。ロングの髪はひっつめて、大学に入ってから落ちた視力を補うためにかけている縁なしのメガネは流宇の精悍さを増しているというのに、美青年から発せられる言葉がうそっぽい様な気がして流宇は眉をひそめた。
「あんた、誰?」
ようやく冷静を取り戻した流宇が口を開くと、美青年は笑顔を崩さずに応えた。
「僕は、リヒト。」
「り・・・ひと?」
リヒトと名乗る青年は流宇が呟いた言葉に頷いて見せた。
リヒトは流宇の手を掴むと、キラキラした微笑を浮かべた。
「じゃあ、やり直ししようか。」
「な、なにを!?」
見慣れないキラキラ笑顔に(精神的に)やられないよう、すこし視線をそらしながら聞き返した。
「だって、さっきファーストキスは夕暮れの公園に決めてるっていってたでしょう?」
リヒトの発した言葉に、流宇は口をパクパクさせた。
そ、そんな・・・。確かに理想はそうだったけど、そんなこと誰にもしゃべったことなかったのに。
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