親戚の理人くん

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コーヒーメーカーからマグカップにコーヒーを注ぎ、自分の椅子に座ると、陽子の料理を食べていたリヒトがさわやかな微笑を浮かべた。 「おはようございます。流宇。」 「おはよう。」 ぼそりとそう返す流宇の後ろから、キッチンにいた陽子がエプロンを外してダイニングにでてきた。 「あら、もうこんな時間。私、クリニック開けるから、後片付け頼むわね。」 ダイニングテーブルの脇にエプロンを放ると陽子は自宅と棟続きになっているクリニックのほうへかけていった。 それを見届けると、流宇はリヒトの方へ視線を向けた。 優雅に朝食を口に運ぶリヒトは貴公子然としており、きっといいところのボンボンなのだろうと流宇は思った。 「ねえ、あんたさ。」 「リヒトです。昨日、自己紹介をしたけど・・・もう一度必要?」 長いまつげをしばたかせ、リヒトは箸を止めて流宇の方を見た。 少し悲しげな表情を浮かべたリヒトに流宇はなんだか罪悪感を感じてしまった。 「悪かった。今度からは名前でちゃんとよぶから。」 寝癖の着いた前髪を掻き揚げながらそういうと、リヒトは先ほどの表情とは裏腹にうれしそうな表情をうかべた。
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