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~サンタクロース~
『あーぁ・・』
サンタクロースがベンチに座って伸びをしている。
手には ―ケーキ屋「リボン」1F― と書かれた紙を持っている。
どうやらクリスマスに向けてのチラシ配りらしい。
『あー!トイレに化粧ポーチ忘れて来ちゃった!取りに行ってくるから、ちょっと待ってて!』
『あっ!ちょっと!!由香!!』
2人の女性の1人が走ってトイレへ向かった。
もう1人がサンタクロースの座っているベンチの端に座った。
―ふとその女性と目が合って和也は胸が熱くなるのを感じた―
女性は和也のその格好とサボっている姿のギャップに笑っていた。
『サンタさんがお仕事サボってるんですか?』
その女性の笑顔はとても素敵だった。
『ハハハ。あの...内緒にしといて下さいね?』
口元に人差し指を立てて和也は言った。
『それは良いんですけど...子供たちが見たら泣きますよ。』
女性は微笑んでそう言った。
『さっき子供にサンタの偽物だって泣かれました。』
『あーぁ...夢壊しちゃダメじゃないですか。』
『でもこう言ってあげたんです。「お兄さんはサンタさんの使いで、良い子をチェックしてるんだよ。君みたいな良い子の所にサンタさんは行くんだよ。」って。そしたらその子ニコッて笑ったんです。夢の力って凄いですよね。』
『そうですね。夢は子供も大人も関係なく支えになってくれる....私のところにもサンタさん来ますかね?』
ふざけた調子で女性はそう言った。
『来ますよ。良い子にしてればね。』
そう言って和也は爽やかに微笑んだ。
『玲奈おまたせー!』
トイレに行った女性が戻ってきた。
『お仕事ちゃんとしてくださいね。それじゃ。』
女性は立ち上がって軽くお辞儀をした。
『良いクリスマスを。』
和也は不思議と心地よい気分だった。
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